Fujiwara/ 9月 30, 2026/ NEWS

9月28日(月)、「第38回 一般・高校生向けセミナー」を開催しました。今回は「次世代農学が拓く未来―食料・環境・地域を支える新たな挑戦―」をテーマに、下野裕之教授(生物生産部門・農学部)が講演を行い、30名の方にご参加いただきました。

セミナーでは、食料生産、環境保全、農業の持続可能性を両立する次世代農学の方向性についてご説明いただきました。

まず、食料とは何かについてお話しいただきました。私たちが生きるために1日に必要なエネルギー量は世界平均で約3,000キロカロリーとされていますが、世界人口が100億人に迫る中、安定的な食料生産が大きな課題となっています。その食料エネルギーは太陽由来のものであり、仮に植物工場で世界の全電力をフルに使用しても、必要な量のわずか3%しか賄えないのが現状です。また、食料生産には「①気候変動に伴う異常気象の多発」「②限られた耕地面積」「③環境負荷への配慮」という3つの制約があります。そのため、今後の食料需要を満たしつつ環境負荷の軽減を図るには、栽培面積の拡大よりも収量(=単位面積当たりの生産性)の向上が重要であるとの説明がありました。

次に、我が国の食料生産の現状についても触れられました。日本における農業の地理的環境や、農林水産業従事者の減少、経営主体の変化について説明がありました。農林水産業自体は国内総生産(GDP)の1%に過ぎないものの、食品産業全体で見れば11%を占めており、我が国の産業にとって重要な位置を占めています。一方で、いわゆる「令和の米騒動」や食料安全保障の観点から、生産者側だけでなく消費者側も食料が持つ意味への理解を深める必要性(=研究者から伝えていく責任)についてお話がありました。

続いて、生産農学が担うべき役割について言及がありました。科学の発展とともに研究基盤も進展し、ゲノム解析やオミックス解析などによってこれまで見えなかったものが見えるようになる一方、生命としての統合的な理解はまだ途上であるとのことです。細胞の視点から見えても、最も重要な「生産性」という量的な形質を理解し生産現場に還元するにあたっては、植物を統合的に理解していくことの重要性が示されました。

最後に、分野を超えた知の結集で「生命を支える」ことについてお話がありました。「緑の革命1.0」が「もっと作る」、「緑の革命2.0」が「持続的に作る」を主題としていたのに対し、現在の「緑の革命3.0」では「作り続けられる社会を作る」ことが求められており、総合知×AI×現場の連携による新たな社会システムの構築が必要であると締めくくられました。
参加者からは、「農学分野については、机上のことだけでは解決できないことを改めて認識した。学問分野としてその成果が現場に生かされることを強く望みます」「昨今、AIの急速な発達による脅威が叫ばれていますが、農業や社会システムなどを束ねる総合知として活用できるような前向きな進歩を遂げることを願うばかりです」「どんなに自然環境が過酷なものとなっても、太陽の下での食料生産からは逃れられないということ、日本の農業(特にコメ生産)が危機的な状況であることを実感しました。」などの声が寄せられました。

今後も毎月程度のペースで継続開催し、当センターの研究成果を日常の身近な話題に落とし込みながら地域へ発信してまいります。皆さまのご参加を心よりお待ちしております。