次世代アグリイノベーション研究センターの高木浩一教授らは、独自の回路手法により、小型・軽量にも関わらず、高効率でナノ秒オーダーのパルス高電圧を発生する事が可能な電源方式を開発しました。この電源を応用し、化学的活性種の生成を高効率で可能なストリーマー放電の時空間制御ならびに、電源効率の最適化を可能とする手法を確立しました。本成果は、応用物理学会の学術誌 Japanese Journal of Applied Physics誌(インパクトファクター1.50 in 2023)に掲載されました。
自動車のエンジンの冷却液や不凍液には、高濃度のエチレングリコールが含まれていることが知られていますが、使用後のこれらのエチレングリコールの再利用は、未だ一部に留まっています。
プラズマや高電圧を農業・畜産・食品に利用する研究が盛んになりつつあります。本年度からスタートした、科学技術振興機構・共創の場形成支援プログラム(COI-NEXT)共創分野・育成型『農村と都市との豊かな結びつきを育む「いわて畜産テリトーリオ」創造拠点』において、プラズマを利用することで、悪臭や粉塵の除去など家畜生育環境を改善する試みがなされています。十分な効果を得るには、安定したプラズマ発生源が重要となり、ナノ秒パルス高電圧電源はその開発において基盤となる重要な役割を持っています。
本研究は、科学研究費基盤研究(S)「パルスパワーによる植物・水産物の革新的機能性制御とその学理深化」(代表;高木浩一 分担;袁春紅、高橋克幸 他)のテーマの1つとして取り組んでいたものです。独自の技術によって、誰でもどこでも使えるような、ナノ秒パルス高電圧電源を開発し、電界の時空間制御を可能とすることで、大気圧・非熱平衡プラズマの高効率生成を可能としました。このことは、電気エネルギーのみによって大気圧・非熱平衡プラズマを形成することで、その場で生成される化学的な活性種を、農業や食品などを含む産業に利用する際の重要な知⾒となります。
【発表論文】
タイトル :Development of an inductive energy storage pulsed power supply using SiC semiconductor devices for ozone
production by streamer discharges
著者 :S. Fujikura, K. Takahashi, K. Takaki
雑誌名 :Japanese Journal of Applied Physics, 63, 111005 (7pp), 2024.11
DOI番号 : https://doi.org/10.35848/1347-4065/ad8452