Fujiwara/ 9月 29, 2025/ RESEARCH TOPICS


AIC生物生産部門 折笠貴寛らの研究グループは、環境影響評価手法の一つであるライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用い、ドライフルーツ製造プロセスにおいて環境負荷を多く排出するプロセスを特定しました。さらに、食品加工操作における環境負荷を評価する際に、ロス率(製品歩留まり)を考慮する必要があることを感度分析により明らかにしました。本成果は、日本食品科学工学会の学術誌である日本食品科学工学会誌に掲載されました。

 

SDGs(持続可能な開発目標)のターゲット12.3では「2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ, 収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食料の損失を減少させる」という目標が掲げられており、農産物の収穫後損失などのフードロス問題は持続可能な社会の構築において重要な問題であると世界中で認識されています。食品加工操作の一つである減圧マイクロ波乾燥は、農産物の収穫後損失を減らすことのみならず、試料の温度上昇および酸化反応の抑制により乾燥食品の高品質化が期待できます。その一方で乾燥はエネルギー消費が大きい加工操作であることから、加工技術としての乾燥の持続可能性について評価する必要があります。本研究では減圧マイクロ波乾燥によるドライキウイフルーツの製造プロセスをモデルプロセスとしてLCA手法を適用し、製品ロスがドライフルーツのライフサイクル環境負荷に与える影響について評価しました。その結果、加工工程における電力消費の寄与度が大きいことを定量的に明らかにしました。また、食品のLCAおいて環境影響評価を行う際は、ロス率(製品歩留まり)を考慮する必要があることを感度分析により示しました。
以上、本成果は、持続可能な食品産業を検討する上で重要な知見となります。今後は、減圧マイクロ波乾燥においてロスが発生しない乾燥条件や、スケールアップによるエネルギー消費量削減の検討に加え、それに伴う環境負荷の評価が必要であると考えられます。

【発表論文】
タイトル :減圧マイクロ波乾燥によるドライキウイフルーツの製造ーロス率の違いがライフサイクル環境負荷に及ぼす影響ー
著者   :都地 菜摘、折笠 貴寛
雑誌名  :日本食品科学工学会誌, 72(8), 279-290
DOI番号  :https://doi.org/10.3136/nskkk.NSKKK-D-24-00100