Fujiwara/ 9月 30, 2022/ RESEARCH TOPICS


次世代アグリイノベーション研究センターの伊藤芳明准教授らは、岩手県で生産量が多いヒエの精白工程で発生し、低利用資源となる糠の利用可能性を拡げるため、動物試験で糖代謝に対する健康有用性を明らかにしました。

 

【研究の背景と概要】

岩手県は雑穀の生産が盛んで、特にヒエは全国の約9割(2020年)を占めます。近年は食生活を気づかう人も多く、ヒエなどの雑穀の人気は高まっています。その一方で、精白過程ではヒエ玄穀の半分くらいが糠となり、再度畑に戻すか、家畜の餌などの付加価値の低い資源となります。岩手生物工学研究センター、JA花巻とサステナブルな原料開発に取り組む株式会社ファーメンステーションは、ここからヒエ糠オイルを抽出・化粧品原料化し、薬王堂のオリジナル化粧品として利用・販売することに成功しました(https://andohu.com/)。今回は、そのヒエ糠オイルを製造する過程で出る残渣物「ヒエ糠搾油カス」を用いて、糖代謝に対する健康有用性を動物実験で評価しました。
ヒエの糠には、食物繊維や抗酸化成分などが含まれていることが知られており、ヒエ糠搾油カスにも残存していると考えられます。そこで、それら成分に期待される血糖上昇の抑制効果や糖尿病動物における病態緩和効果を検討しました。
その結果、ヒエ糠搾油カスを混合した飼料を摂取した正常動物では、食後の血糖上昇が抑制されました。その際、糞便量が多かったことから消化吸収を抑えている可能性が考えられました。また、糖尿病動物では、多飲や過食などの糖尿病の症状や糖化ヘモグロビン値の低下が見られ、肝臓での抗酸化酵素の上昇も認められました。以上から、ヒエ糠搾油カスには糖代謝機能に負担を与えない健康食材としての付加価値がある可能性を示すことができました。
今後は、人に食べやすい加工食品の原料としての開発がされることで、地域に根ざした付加価値のある高度循環型な食糧生産と利用に発展することを期待します。

【発表論文】

タイトル:Ameliorative effects of Japanese barnyard millet (Echinochloa esculenta H. Scholz) bran supplementation in streptozotocin-induced diabetic rats.
著者  :伊藤芳明、鈴木綾香、奈須川晴夏、宮木謙爾、矢野明、長澤孝志
雑誌名 :Food Science and Technology Research 28 (5) 431-439 (2022)
DOI番号 :10.3136/fstr.FSTR-D-22-00079

 

 

 

 

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