Fujiwara/ 5月 24, 2024/ RESEARCH TOPICS

次世代アグリイノベーション研究センターの下野裕之教授らは、過去109年に日本で育成されたイネ284品種の生殖器官の形態変化を評価したところ、育種過程で積極的な改良がなされていなく、気候変動への適応のための余地が多くあることを明らかにしました。本成果は、米国の歴史ある学術誌 Agronomy Journal誌(インパクトファクター 2.65 in 2021)に発表しました。

 

地球温暖化により気候変動が拡大する中で安定的に食料生産を行う上で、日本また世界の主食の1つであるイネの生殖器官への環境ストレスが大きな懸念になっています。イネの生殖器官の中でも、特に雄性器官である葯また花粉は環境ストレスに弱く、環境ストレスによる障害を受けることで、充実した花粉数の不足を原因とした不受精により壊滅的な被害を受けます。

本研究では、過去109年に日本で育成されたイネ284品種の生殖器官の形態的な変化について異なる窒素施肥条件で評価しました。その結果、「緑の革命」で知られるように、育種過程で稈長を短くする短稈化が進んできた一方で、生殖器官である葯や柱頭のサイズには一貫した傾向がみられないことを明らかにしました。このことは、気候変動への適応のため生殖器官の改良の余地が多くあることを示す重要な知見です。

【発表論文】
タイトル :Genetic progress for floral morphology under different nitrogen of rice cultivars in Japan.
著者   :Shimono, H.*, Sato, R., Abe, A., Nisho, H., and Kudoh, H.
雑誌名  :Agronomy Journal
DOI番号 : https://doi.org/10.1002/agj2.21592