次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授らは、中国山東農業大学の王冉冉准教授との共同研究により、食品加熱技術の一つである通電加熱を制御することにより、淡水魚コイのすり身のゲル形成特性に関する研究を行い、その成果を国際学術誌「Journal of Food Science」(IF 3.9、2022年)に発表しました。
通電加熱は、食品に直接電流を流して電気エネルギーで加熱する方法であり、水産練り製品の加熱に広く用いられています。この方法はエネルギー効率が高く、迅速で均一な加熱が可能で、連続処理や温度制御が正確かつ容易という利点があります。
すり身の製造過程では、一般的に魚肉中のゲル形成阻害物質を除去するために「水晒し」と呼ばれる洗浄工程が行われます。しかし、「水晒し」では大量の水溶性タンパク質や脂質を含む廃液が発生し、環境負荷が高くなります。本研究では、高鮮度の硬直前のコイを原料として、通電加熱(OH)条件が洗浄および未洗浄のすり身のゲル特性に与える影響を調査し、ウォーターバス加熱(WB)で製造されたすり身ゲルと比較しました。
その結果、コイすり身のゲル特性はWBと比較してOHによって大幅に改善されることがわかりました。また、高鮮度の硬直前の原材料から作られた未洗浄すり身は、洗浄すり身よりも優れたゲル特性を示しました。最も高品質なすり身ゲルは、10 kHz 20 V(10 V/cm)での加熱によって得られ、加熱速度をさらに上げると、すり身ゲルのネットワーク構造に悪影響を及ぼし、ゲル強度や保水性などのパラメータが低下することが明らかになりました。
本研究は、通電加熱技術を淡水魚すり身加工に応用するための基礎データを提供し、すり身ゲルの加工技術の改良が期待されます。
※この研究は岩手大学、中国山東農業大学の研究者が協力して成果を上げました。
【発表論文】
タイトル :The effect of ohmic heating conditions and heating modes on gel properties of unwashed pre-rigor common carp (Cyprinus carpio) surimi
著者 :Ranran Wang, Jingying Mu, Kefeng Yu, Zhuran Hu, Yudao Li, Chunhong Yuan
雑誌名 :Journal of Food Science
DOI番号 : https://doi.org/10.1111/1750-3841.17165