Fujiwara/ 2月 12, 2025/ RESEARCH TOPICS


次世代アグリイノベーション研究センター 芝﨑祐二教授らの研究グループは、水溶液高分子化合物であるポリエチレンイミンに対して、少量の包摂化合物を化学的に連結することで、この高分子化合物に対して、機械的な強度、形状記憶特性、重金属捕捉能を付与することに成功し、その成果はElsevier社の国際誌であるNext Materialsに掲載されました(2025年1月6日、Volume 7, 100513, doi.org/10.1016/j.nxmate.2025.100513)。

 

石油由来のプラスチック(高分子化合物)は大気中の二酸化炭素濃度の上昇や海水、土壌汚染など、多くの環境問題を抱えており、早急な対策が望まれています。多くの石油由来の高分子化合物は脂溶性であり、生分解速度が非常に遅いことが課題として挙げられています。水に可溶な高分子化合物の適切な設計と利用は環境問題を低減できますが、水溶性高分子化合物は環境中では容易に変形や溶解を受けてしまい、材料として利用できません。芝﨑等の研究グループでは、水溶性の高分子化合物であるポリエチレンイミンに、金属などを包摂可能な分子を化学的に導入することで、水溶性ポリエチレンイミンに対して外環境での安定性を付与、材料化することに成功しました。開発された高分子化合物は、自らの形状を記憶する、形状記憶能を示すとともに、土壌や河川中の有害な重金属イオンを吸着できる能力を示すことが明らかとなりました。また、現在、開発された高分子化合物から、包摂可能な分子のみを選択的に取り外す研究に取り組んでおり、水溶性高分子化合物の再利用を目指した研究開発を進めています。今回の技術は、様々な水溶性高分子化合物の材料化への道を切り開き、環境問題の低減に大きく寄与します。

【発表論文】
タイトル :Fabrication of self-standing hyperbranched poly(ethyleneimine) film with shape-memory
      and copper adsorption behavior via simple polymer reaction with
      tetraazacalix[2]arene[2]triazine dichloride
著者   :Tomohiro Suzuki, Ryota Shibata, Tadashi Tsukamoto, Yuji Shibasaki
雑誌名  :Next Materials
DOI番号  : doi.org/10.1016/j.nxmate.2025.100513