Fujiwara/ 11月 21, 2022/ RESEARCH TOPICS

 

AIC生物生産部門 山田美和らの研究グループは、同研究グループで
以前に発見したバイオプラスチック合成菌の代謝経路を解明し、
本菌の遺伝子組換え技術を開発しました。

 

微生物の中には、栄養飢餓状態になると細胞内にバイオプラスチックを蓄積するものが存在しています。このバイオプラスチックを合成する微生物は、植物由来の糖や植物油をエサとして生育できるため、植物由来の豊富に存在する生物資源をバイオプラスチックの原料とすることができます。また、微生物が合成するバイオプラスチックは、高い生分解性を有していますので、使用後は環境中の微生物に分解され、水と二酸化炭素まで完全に分解されることが確認されています。分解によって生じた水と二酸化炭素は、再び原料となる植物の生育に利用されるため、微生物によるバイオプラスチック合成技術は、二酸化炭素放出量が低い炭素循環型のプラスチック合成法として注目されています。さらに、環境中で完全に分解できる生分解性プラスチックの応用は、近年懸念されている環境中に蓄積し、生態系に悪影響を与えているマイクロプラスチック問題の打開策としても期待されています。これまで多くの研究は、陸上植物を原料としたバイオプラスチックの微生物合成を目指しているものでしたが、山田らの研究グループは三陸の海で豊富に得られる食用以外の海藻類や加工後の廃棄海藻部分を原料としたバイオプラスチックの微生物合成を目指しており、海藻成分を効率よくバイオプラスチック合成に利用できる新たな微生物を大船渡湾から発見しました。
[H. Moriya et al., Frontiers in Bioengineering and Biotechnology, 8, https://doi.org/10.3389/fbioe.2020.00974 (2020)]
実用化を考えるには、生産量の向上や原料の処理方法の検討など、解決しなければならない課題が山積みです。今回の成果は、見出した微生物のバイオプラスチック合成能力を強化するために必須となる、微生物細胞内のバイオプラスチック合成経路の把握と、本菌の育種に大きく貢献することができます。将来は岩手県発の世界が喜ぶ新たなものづくり技術へ展開することを目指して、今後も研究を進めて行きます。

参考論文
1. A. Matsumoto et al., The Journal of General and Applied Microbiology (2022)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgam/advpub/0/advpub_2021.11.002/_article

2. Y. Umebayashi et al., The Journal of General and Applied Microbiology (2022)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgam/advpub/0/advpub_2022.10.004/_article/-char/ja

 

 

 

 

 

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