次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授と同大学農学部山下哲郎教授、宮崎珠子准教授、王卓琳研究員、浅沼宏一らは、岩手県の地域資源の雑穀を活用して醤油風調味料を製造し、通常の醤油と比較することで、異なる原料が製品の特性に与える影響を明らかにしました。その成果はElsevier社の国際誌であるFood Bioscience(インパクトファクター5.2)に掲載されました(Volume 59,June 2024, 104198)。
【研究の背景と概要】
岩手県の地域資源から選ばれた十種類の雑穀(押麦、発芽玄米、赤たかきび、アマランサス、もちきび、ひえ、米ぬか、ひよこ豆、菜種搾りかす、エゴマ搾りかす)を活用して醤油風調味料を製造しました。これらの原料は、主要なアレルゲン食品として記載が義務付けられていないものや、高レベルのアミノ酸を含む豆類など、多様な特性を持っています。これら多様な材料から醤油風発酵調味料を製造することで、気候変動により大豆や麦が利用できなくなった際の代替穀物の選定や醸造法の開発を実現しました。また、通常の醤油原料と比較して、製造した調味料の物理化学組成、遊離アミノ酸レベル、GC-MSによる香気成分の分析、色度計による色の分析、QDA法による官能評価などの包括的な分析を通じて、各原料の特性を明らかにしました。
実験結果として、タンパク質含量の高い原料は、発酵後の調味料中の遊離アミノ酸濃度が高くなりました。嗜好属性アミノ酸量のトップ3は、醤油、菜種搾りかす、エゴマ搾りかすでした。揮発性臭気成分については、発芽玄米と押麦を除き、各原料がそれぞれ特徴的な香気成分を有していました。官能評価では、発芽玄米とひえを発酵させた調味料は同じグループに分類され、それ以外は別のグループとなりました。味覚アミノ酸、香り、官能評価の関係をPLSRで分析した結果、通常の醤油は甘味とうま味が主な特徴でしたが、対照的に、菜種搾りかすから発酵させた調味料は苦味が主という結果でした。通常の醤油の香りは主に穀物や紅茶に由来するものであったのに対し、菜種はダシの香ばしい香りが特徴的でした。実験を通して、各原料に最適な発酵条件の決定や風味生成微生物の添加効果などの研究が必要であることが示唆されました 。
【発表論文】
タイトル :Development and characterization of Japanese soy sauce-like fermented seasoning with various ingredients
著者 :Koichi Asanuma, Zhuolin Wang, Tamako Miyazaki, Chunhong Yuan, Tetsuro Yamashita
雑誌名 :Food Bioscience
DOI番号 : https://doi.org/10.1016/j.fbio.2024.104198