Fujiwara/ 11月 10, 2025/ RESEARCH TOPICS

 

次世代アグリイノベーション研究センターの西向めぐみ教授と山田美和教授は、弘前大学農学生命科学部の柏木明子教授との共同研究により、微生物由来の酵素を用いて世界で初めてイノシトールプラスマローゲン(PlsIns)の酵素合成に成功した。この成果はBiotechnology Lettersに掲載された。

 

プラスマローゲンは、膜の安定化や抗酸化作用、シグナル伝達など多様な生理機能を担うエーテル型リン脂質の一種であり、アルツハイマー病や動脈硬化症など酸化ストレス関連疾患との関係が注目されている。これまでコリン型(PlsCho)やエタノールアミン型(PlsEtn)などの天然型プラスマローゲンは知られていたが、イノシトール型プラスマローゲン(PlsIns)は天然にはほとんど存在せず、その機能も未解明であった。
本研究では、放線菌由来の酵素ホスホリパーゼDを利用し、Selenomonas ruminantiumや鶏むね肉由来のプラスマローゲンを基質として、myo-イノシトールを導入することで新規PlsInsの合成に成功。得られた生成物はLC–MS/MSにより構造が確認された。
本成果は、これまで合成が困難であったPlsInsを酵素反応で創出する初の報告であり、異なる官能基をもつ多様なプラスマローゲンの創製や、それらの生理機能の解明に向けた新たな研究展開を可能にするものである。

【発表論文】
タイトル :Enzymatic synthesis of inositol plasmalogens from distinct lipid sources using phospholipase D
         from Streptomyces antibioticus
著者   :Shamoli Akter, Megumi Nishimukai, Miwa Yamada & Akiko Kashiwagi
雑誌名  :Biotechnology Letters, 2025 Sep 8;47(5):98.
DOI番号  :https://doi.org/10.1007/s10529-025-03638-9