次世代アグリイノベーション研究センターの原科幸爾教授らは、日本とオーストリアの森林について、全国的な森林資源調査のインベントリーデータを用いた両国の基本的な森林の特性に関する比較・解析の結果から、日本の森林が持つ木材収穫量増加のポテンシャルを評価しました。この度、この研究成果が学会誌に掲載されました。
日本は国土の2/3が森林であるにも関わらず、60%以上の木材を輸入に依存しています。日本の林業が不振であることの一般的な説明として、林業先進国とされるドイツやスウェーデンなど比べて山地の多い日本では地形が急峻であることが言われています。一方、オーストリアは日本と同様に山地の多い国土を有しています。このため、これまでも日本の林業との比較研究がされてきており、日本では林道の路網密度が低いことや所有面積が小規模な山主が多いこと等が説明されてきました。しかし、これらの研究では、基本的な森林の特性についてはあまり詳しく触れられていませんでした。
本研究では、両国の全国的な森林資源調査のインベントリーデータを用いて、森林材積量の変化や森林分布の構造、年間生長量に対する利用率を比較しました。その結果、両国の面積当たりの森林材積の年間生長量は、ほぼ同程度であることがわかりました。両国ともに森林の総材積量は増加していますが、針葉樹・広葉樹でみると、日本では針葉樹の材積の増加率の方が広葉樹よりも高いのに対し、オーストリアでは広葉樹の材積増加率の方が高いという対照的な状況にあることが分かりました。また、これまでの研究とは異なり、日本の人工林はオーストリアの森林よりも面積当たりの木材ストック量が多いという結果が得られました。日本では,戦後の拡大造林時に植林された40-60歳の年齢層の立木量の割合が他の年齢層に比べて非常に高く、木材ストックが極端に偏っている一方、オーストリアでは比較的林齢構成が平準化されていることがわかりました(図1)。木材の年間生長量に対する伐採材積の割合は,オーストリア(88%)が日本(53%)よりはるかに高く(図2)、日本の森林セクターは木材の収穫量を増やすポテンシャルが高いことが示唆されました。
【発表論文】
タイトル :Assessing the resource potential of mountainous forests: a comparison between Austria and Japan
著者 :Leiter, M., Neumann, M., Egusa, T., Harashina, K., and Hasenauer, H
雑誌名 :Forests 13(6), 891
DOI番号 :https://doi.org/10.3390/f13060891