次世代アグリイノベーション研究センターの原科幸爾教授らは、盛岡市市街地においてハクビシンの追跡調査を実施し、その結果から日本の都市部におけるハクビシンのねぐらの選択性と利用パターン、および選択と利用の季節による変化について明らかにしました。なお、本研究の成果は国際的な学術論文誌に掲載されています。
ハクビシン(Paguma larvata)は全国的に生息数が増加しており、農村部での農業被害だけでなく、都市部では家屋の屋根裏をねぐらとして利用することで、糞尿や騒音といった生活環境被害を引き起こしています。ハクビシンのねぐらの嗜好性を理解することは、その個体数増加を抑制するのに役立つ可能性があります。
本研究では、日本の都市部におけるハクビシンの追跡調査から、ハクビシンのねぐらの選択性と利用パターン、および選択と利用の季節的変化について明らかにしました。
岩手県盛岡市の大慈寺地区と上堂地区で5頭のハクビシンを追跡し、84ヶ所のねぐらを特定しました。全体的には、ハクビシンは倉庫や屋外よりも建物をねぐらとして選ぶ頻度が高く、屋外の巣穴は夏にのみ使用されることがわかりました(表1)。ねぐらの約半数は1回しか使われない一方、利用回数の多い上位3つの巣穴は、全体利用回数の40%~60%を占めていました(図1)。両地区全体でみると住宅が最も多く利用されていましたが、大慈寺地区では、寺社がとくに多く選択されていました。冬には、ハクビシンはより断熱性の高い建物(寺社,住宅または空き家など)に依存し、同じねぐらを継続的に利用する傾向がありました。
これらの結果から、都市部に生息するハクビシンは建物を巣穴として選択する傾向があるため、ハクビシンが越冬しにくい環境を作るためには、ハクビシンが建物を巣穴として利用できないように管理することが重要であると考えられます。
【発表論文】
タイトル :Den site selection and seasonal changes in use patterns by the masked palm civet (Paguma larvata) in urban areas of Morioka City, Japan
著者 :Fukushima, Y., Harashina, K., Nishi, C. (2023)
雑誌名 :Landscape and Ecological Engineering
DOI番号 : https://doi.org/10.1007/s11355-023-00571-9
表1 季節ごとに見たねぐらの数と利用回数
図1 ハクビシンの個体ごとにみた季節ごとのねぐらの利用割合。各個体(M1~F3)の棒グラフの1区画が1つのねぐらを示している。棒グラフの網掛けの部分は最も多く利用されたねぐらで、数字はそのねぐらの利用回数を示す。