Fujiwara/ 2月 20, 2024/ NEWS

1月23日(火)岩手大学農学部内を会場に第151回サイエンスカフェin 岩手を開催しました。

サイエンスカフェは、農芸化学の専門家と地域の皆様が、カフェのような雰囲気で気軽に科学の話題を話し合う場として、(公財)日本農芸化学会が全国各地で主催するものです。
今回は、山田美和 生物生産部門兼任教員(農学部教授)が「岩手の微生物が世界を救う !?自然に還るバイオプラスチックのおはなし」をテーマに、日頃の研究をご紹介しつつ、参加された12名の皆さまと語り合う場となりました。

近年、化学合成プラスチックの大量生産による石油資源の枯渇、大量消費・廃棄によるプラスチックごみの蓄積など環境負荷の解決が急がれています。その解決法の一つとして、山田先生は、バイオプラスチックのなかからPHA(ポリヒドロキシアルカン酸)に注目され、微生物による生分解性プラスチックの合成法を研究されています。自然界から採取した微生物(天然菌)からPHAの原料を好んで摂取する菌を抽出し、PHAの原料(植物由来の糖や油)、菌の栄養源となる餌、酸素を液体状の培地で培養します。2日ほどで微生物が体内でPHAを生成し、洗浄などの処理をして微生物から取り出せるとのことです。この生成法は、生成の過程で重金属の使用などの化学合成がなく、化学合成プラスチックの生成と比べ二酸化炭素消費量を削減できるとの報告もあり、環境に低負荷な生成法として期待されています。

また、先生は岩手県内を中心に非食海藻や食用海藻の非食部位からPHA合成菌の探索をし、バイオプラスチックの微生物合成も研究されています。この研究により、国内で多様な種類の原料の調達が可能で、輸入に頼らない持続可能な生産が期待できます。

講演中には、従来の化学合成プラスチック(難生分解性のプラスチック)合成実験のデモンストレーションも行い、参加者のみなさんと一緒に、化学合成と生物合成法についてのメリット・デメリットについて議論しました。

最後に、それぞれのご自宅で生分解実験に挑戦していただけるよう、参加者の皆様に講義中に合成したプラスチックと生分解性プラスチックをお渡ししました。庭やプランターにサンプルを埋めておくと、変化の違いを見届けられるとのことです。

講演の冒頭、今回の共催団体である日本学術会議の概要につきまして、東北大学大学院 山下まり教授から参加者の皆様にご紹介いただきました。日本を代表する学術団体について、直接専門家の方からご説明をいただける貴重な機会となりました。山下先生、ありがとうございました。

次回は、2月26日(月)に講演会「岩手から発信!私たちの生命を支える農林水産業の未来像」を開催します。農業・林業・水産・畜産にかかわるトップランナーの講演、異なる分野間での議論を行います。皆様のご参加をお待ちしております!