次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授(責任著者)、と同大学農学部塚越英晴准教授と王卓琳研究員らは、淡水魚ハクレンのタンパク質とその利用に関する長年の研究成果を総説としてまとめ、「Silver carp (Hypophthalmichthys molitrix) utilization: Surimi innovations based on seasonal variation in muscle proteins」を、2024年11月にTrends in Food Science & Technology(IF2024: 15.1)に発表しました。
この総説では、中国における淡水魚すり身製品の文化と歴史を概観するとともに、すり身の原料(生鮮および冷凍)が持つゲル形成能力の分子メカニズムを解説しています。特に、ハクレンの筋肉タンパク質(ミオシン、アクチン、トロポミオシン、筋小胞体Ca²⁺-ATPase、内因性トランスグルタミナーゼ)の季節変動に着目し、それに基づく最適な加工条件を提案しました。季節ごとの変化に応じた加工法を確立することで、すり身製品の品質向上と効率的な製造を目指しています。さらに、現代のすり身製品に関する最新のトレンドとして、低塩製品の開発、3D食品印刷、嚥下障害者向けの食事、機能性添加物の活用、環境負荷の低い加工技術などを紹介しています。今後の研究課題としては、環境に優しい養殖方法の開発、伝統的な食文化のない地域での淡水魚すり身製品の普及、栄養価の最適化と最小限の加工、さらにAIを活用した製造プロセスの最適化が挙げられています。これらの研究の進展は、すり身製品の栄養価と健康効果を高めるだけでなく、原材料の効率的な利用や副産物の有効活用、環境に配慮した持続可能な生産システムの構築にも貢献すると期待されています。
【発表論文】
タイトル :Silver carp (Hypophthalmichthys molitrix) utilization: Surimi innovations based on seasonal variation in muscle
proteins
著者 :Zhuolin Wang, Yuanyong Tian, Hideharu Tsukagoshi, Wenzheng Shi, Zongcai Tu, Youling Xiong, Chunhong Yuan
雑誌名 :Trends in Food Science & Technology
DOI番号 :10.1016/j.tifs.2024.104737