12月21日(木)、「第17回一般・高校生向けセミナー」を開催しました。
第17回は【都市・農村における人間と野生動物の関係の再構築】の演題で、原科幸爾 (はらしなこうじ)生態環境部門兼任教員(連合農学研究科教授) が講演を行い、48名の参加者に熱心に聴講いただきました。
近年、市街地においても野生動物が頻繁に出没したりクマによる人身事故<が発生するなど、人間と野生動物の関係が変わってきていると考えられています。講演では、野生動物の生態に関する研究成果や研究等のデータをもとに人間と野生動物の新たな共存関係を築く取組みについて、岩手県内の事例を中心に紹介いただきました。
岩手県の北上山地は日本有数のイヌワシの生息地です。住田町の山林では、セメント鉱山の開発がイヌワシの狩場の生態系に与える影響を補償するため、生物多様性オフセットの考えに基づいて、異なる場所に新しい生態系を整備しているとのことです。また、盛岡北道路(国道4号線)では、拡幅工事の際にニホンリスの移動経路を確保するオーバーパス、ほかの野生動物にはアンダーパスを整備し、新しい道路によって分断された生息地の往来を維持することで生息環境を補償しています。
シカの本州以南における総個体数は、近年減少傾向にあるものの、植生や農産物への被害状況からすると依然として捕獲の強化が必要とのことです。大槌町では、害獣といわれるシカを減らすだけでなく、資源として活用するジビエブランドの確立をめざすプロジェクトが進んでいます。また、盛岡市は市街地でも野生動物を観察しやすい環境にあるとのことで、ハクビシン、リスなど盛岡市内で見受けられる野生動物の生態について、原科研究室による最新の研究成果および学生プロジェクト「野生動物園」の活動成果から説明していただきました。
ご参加の皆さまからは、「野生生物と人間の共存や関係性についての説明がわかりやすかった」「野生動物と人間の関係について、人間が野生動物に対する正しい知識を持つことが大切だと改めて学んだ。」「業務の参考にしたいと思う」といった感想が寄せられました。
次回は1月23日(火)に第151回サイエンスカフェin 岩手を開催いたします。
【岩手の微生物が世界を救う !?自然に還るバイオプラスチックのおはなし】をテーマに、山田美和 食と生活部門兼任教員(農学部教授)が日頃の研究成果をご紹介しつつ、ご参加のみなさまとお茶を飲みながら語り合う場となっております。
今後も継続的に開催し、当センターの研究成果を日常の身近な話題に落とし込みながら地域に向けて発信していきます。
ご参加をお待ちしております!