次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授らは、瞬時加熱の殻剥き処理がホタテガイ貝柱の品質において、特に風味の向上と加工の利便性の面で優れていることを明らかにしました。
【研究の背景と概要】
ホタテガイ(Mizuhopecten yessoensis)は、北海道および日本の北東部地域、中国北部沿岸に自然分布する、海洋性の二枚貝です。また、広範囲にわたって養殖も行われています。ホタテガイの貝柱は食用の主要部位であり、高い栄養価を有しています。貝柱にはタンパク質、ミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれており、高級な珍味として評価されています。ホタテガイ貝柱は刺身に加工され、プレミアム価格で販売されることがあります。生活水準の向上に伴い、多くの消費者が殻付き生ホタテガイを購入することを好む傾向があります。しかし、ナイフを使用して高活力ホタテガイの殻剥きするのは時間がかかり、専門知識が必要な手間のかかるプロセスです。寿司屋では活きたホタテガイを瞬時加熱し殻剥きを行っているところもありますが、この処理が貝柱の品質にどのような影響を与えるかは明確ではありませんでした。
本論文は、瞬時加熱がホタテガイ貝柱の品質に与える影響について調べました。熱処理は、ホタテガイ貝柱の外層において味を向上させるヌクレオチドの生成に寄与する可能性があります。特に、加熱時間が増えるとアデノシン一リン酸(AMP)の含有量が増加することが示されました。加熱後の急速なAMPの蓄積は、その後の冷却過程でイノシン(HxR)とヒポキサンチン(Hx)のより速い蓄積を引き起こし、水産物に苦味をもたらす可能性があります。瞬時加熱後、ホタテガイ貝柱の外層は硬化する可能性があります。SEMの結果から、加熱時間に応じて筋繊維は横方向に集合し、縦方向に収縮する傾向があります。また、官能評価の結果に基づいて、生食用のホタテ貝柱を素早く消費するには、瞬時加熱の殻剥きが適当です。瞬時加熱は、高い活力を持つホタテガイの処理において、家庭、レストラン、小規模工場向けに推奨されています。
以上の結果から、瞬時加熱の殻剥き処理がホタテガイ貝柱の品質において、特に風味の向上と加工の利便性の面で優れていることが示されました。また、本研究の成果は、ホタテガイの品質維持に関する理論的な方法や評価方法に活用でき、加工から保蔵におけるホタテガイの品質維持に寄与する重要な知見となると考えられます。
【発表論文】
タイトル :Effects of Flash-boil Shucking on Biochemical, Sensorial and Ultrastructural Properties of
Yesso Scallop (Mizuhopecten yessoensis) Adductor Muscle During Refrigeration
著者 :Yabin Niu, Shiliang Dong, Nobuyoshi Wada, Huamao Wei, Tetsuro Yamashita,
Koichi Takaki, Chunhong Yuan
雑誌名 :Food Quality and Safety
DOI番号 : https://doi.org/10.1093/fqsafe/fyad031