次世代アグリイノベーション研究センター 芝﨑祐二准教授らの研究グループは、蛍光色素でラベリングした磁性体ナノ粒子(直径20 nm)の生体適合性ポリマーによる有機無機ナノコンポジットの開発に成功し、その成果はElsevior社の国際誌であるPolymer(インパクトファクター4.6)に掲載されました(2024年1月24日、Volume 294 126724)。
磁性体ナノ粒子はバイオセンシングやバイオイメージング、あるいは温熱治療、ドラッグデリバリーシステムなど、生物医学分野で大きな期待を集めている新しい材料です。しかしながらこのナノ粒子は生体内では不安定で容易に凝集してしまいナノ粒子としての特性を失ってしまいます。生体内においてもナノ粒子を安定に存在させるための多くの技術が開発されていますが十分な安定性を得るには至っていません。
今回、研究チームが開発した技術は、オレイン酸で被覆された脂溶性ナノ粒子を非常に簡便に短時間で水溶性粒子に変換する技術を開発しました。この得られた水溶性ナノ粒子表面に、反応性生体適合性ポリマーとして知られるグリセリンポリマーを被覆し、蛍光色素を導入することに成功しました。このナノ複合材料はヒト由来のMCF-7細胞に対して毒性が低く、細胞取り込み実験に十分耐えうるものであることが証明されました。
今後、開発されたナノ複合体を細胞中に導入し、外部磁場により操作することで、細胞内オルガネラの遠隔操作を行い、細胞内における未知の事象の解明に役立てたいと考えています。
【発表論文】
タイトル :Fabrication of hyperbranched-polyglycidol-Fe3O4 nanocomposite labeled with fluorescein isothiocyanate via rapid ligand exchange reaction
著者 :Ayane Kawamura, Mirai Saijyo, Boldbaatar Bayarkhuu, Naoki Nishidate, Ibuki Oikawa, Satoru Kobayashi , Koichi Oyanagi , Yoko Shiba, Tadashi Tsukamoto, Yoshiyuki Oishi, Yuji Shibasaki
雑誌名 :Polymer
DOI番号 : https://doi.org/10.1016/j.polymer.2024.126724