
岩手大学農学部(次世代アグリイノベーション研究センター)の西向めぐみ教授と山田美和教授の研究グループは、嫌気性細菌 Selenomonas ruminantium が産生する「奇数鎖プラスマローゲン」が、哺乳類の腸管から吸収され、体内で構造が作り替え(リモデリング)られて血液中を循環することを世界で初めて明らかにしました。本成果は、日本油化学会の英文誌『Journal of Oleo Science』に掲載されました。
プラスマローゲンは、抗酸化作用や細胞膜の安定化、認知機能の改善効果などが注目されているエーテル型リン脂質です。通常、哺乳類の体内に存在するプラスマローゲンの脂肪族鎖は「偶数」の炭素数で構成されていますが、一部の微生物は「奇数」の炭素数を持つ特殊なプラスマローゲンを合成することが知られています。しかし、これら微生物由来の奇数鎖プラスマローゲンが、哺乳類に摂取された際にどのように吸収・代謝されるかは謎に包まれていました。
本研究では、S. ruminantium から抽出した奇数鎖に富むエタノールアミン型プラスマローゲン(PlsEtn)をラットに投与し、リンパ液および血漿中を分析しました。その結果、投与後に奇数鎖(p15:0、p17:0など)を持つプラスマローゲンがリンパ液中に有意に増加し、腸管から直接吸収されることが確認されました。さらに、吸収の過程でsn-2位の脂肪酸がアラキドン酸(20:4)やドコサヘキサエン酸(22:6)といった多価不飽和脂肪酸に置き換わる「リモデリング」が起きていることも判明しました。
また、奇数鎖プラスマローゲンは、豚脳由来の一般的な偶数鎖プラスマローゲンと比較して、血中での増加率が高く、代謝分解を受けにくい可能性が示唆されました
本研究成果は、微生物由来の多様な構造を持つプラスマローゲンが、生体内で独自の挙動を示すことを証明したものです。これにより、特定の炭素鎖を持つプラスマローゲンを用いた新しい機能性食品の開発や、疾患予防への応用など、脂質科学における新たな研究展開が期待されます。
【発表論文】
タイトル :Intestinal Absorption and Remodeling of Odd-Numbered Plasmalogens Derived from
Selenomonas ruminantium in Rats
著者 :Ao Takeuchi, Nana Sato, Miwa Yamada, Akiko Kashiwagi, and Megumi Nishimukai
雑誌名 :Journal of Oleo Science, 75, (5) 589-606 (2026)
DOI番号 :https://doi.org/10.5650/jos.ess25266

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