Fujiwara/ 2月 26, 2025/ RESEARCH TOPICS

次世代アグリイノベーション研究センターの高木浩一教授および袁春紅教授らは、ナノ秒オーダーのパルス電界を発生できる装置を用いて、加熱することなく水産物の内在性酵素の活性を下げ、水産物の鮮度維持や食品としての機能性の維持に取り組みました。水産物は含有するATPが、ATPアーゼなどの酵素でADP、AMP、IMP、HxR、Hxの順に分解されて鮮度が下がります。本研究では、水産物の内在性酵素の不活化とATPの分解防止を目的とし、ホタテ貝柱の粉末を異なる塩濃度のNaCl溶液や異なるカチオン溶液に溶解して酵素溶液にパルス電界処理を行い、パルス電界処理がATP含有量を保つことに有効なことを示しました。本
                      成果は、プラズマ応用科学会の学術誌、プラズマ応用科学に掲載されました。

本研究は、科学研究費基盤研究(S)「パルスパワーによる植物・水産物の革新的機能性制御とその学理深化」(代表;高木浩一 分担;袁春紅、高橋克幸 他)のテーマの1つとして取り組んでいたものです。食品などの酵素失活には、通常は熱処理が用いられます。熱処理は、確実な酵素失活を可能にする反面、タンパク質の変性や食味、食品機能性、香りなどの変化を伴います。パルス電界処理は、酵素の基質の構造を変えることで、タンパク質の凝集などを伴うことがない酵素不活性が可能になる技術です。本研究では、水産物のATP関連酵素の不活性化にもパルス電界処理が有用であることや、その効果の処理条件依存性なども明らかしました。これらの成果は、水産食品などを含む食品産業にパルス電界処理(非加熱処理)を利用する際の重要な知⾒となります。

【発表論文】
タイトル :IPEF処理がホタテの内在性酵素に及ぼす影響
著者   :木谷映玲奈、藤原百合、高橋克幸、高木浩一、袁春紅
雑誌名  :プラズマ応用科学,Vol.32,No.2, pp. 80-86, 2024.12

 

 

 

 

 

 

パルス電界処理サンプルのATP含有量およびそれらの分解物の時間変化の表およびATP含有量の時間変化のグラフ