Fujiwara/ 6月 2, 2023/ RESEARCH TOPICS

 

次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授らは、ゴマサバの鮮度保持方法に着目し、
5℃での保管中サバの硬直前の鮮度保持の有効性を明らかにしました。

 

 

ゴマサバ(Scomber Australasicus Cuvier, 1832)は、日本での漁獲量が豊富なスズキ目サバ科に分類される魚の一種である。鯖缶や塩漬け、調理済み製品の他、生鮮なゴマサバも多く消費されている。しかし、ゴマサバの筋肉は凍結と解凍によって、非常に品質が落ちやすいと報告されている。一方、ゴマサバの価格は鮮度に大きく影響を受ける。鮮度の良いゴマサバの平均卸売価格は1500円/kgに対し、硬直後の加工用ゴマサバの価格は80円/kgしかない。したがって、消費者の高品質な魚に対する需要の高まりと経済効果により、高品質での鮮度維持が重要な課題となった。

筋小胞体は、筋原線維全体に広がる筋細胞内の動的なカルシウムポンプである。筋小胞体は、細胞内のCa2+濃度を調節することにより、筋肉の収縮と弛緩を制御する重要な役割を担っている。筋小胞体の機能は、筋肉の保存条件に影響され、低pHと高温は、筋小胞体のCa2+取り込み能力の低下に相関していた。死後硬直の進行の違いは、筋小胞体の生化学的および形態学的機能の違いに部分的に起因する可能性があると指摘されていた。しかし、魚の鮮度に対応する筋小胞体に関する文献はほとんどなかった。

本研究のゴマサバの筋小胞体は、5℃の低温保存中でも不安定の結果を示した。1日目に膨張し、2日後には完全に破裂した。カルシウムイオンの取り込み能力を反映する筋小胞体Ca2+-ATPase(SERCA)活性は1/5に低下し、筋小胞体の抽出量は保存2日後に1/10に低下した。筋小胞体の機能性および構造の変化は、ATP量、pH、ミオシンCa2+-ATPase活性の低下、ゴマサバ背筋の構造変化と関係しており、筋小胞体の劣化が鮮度変化と強い相関があることが示唆された。ゴマサバのSERCAはpH6.8~7で最も活性が高くなり、pH5.5と8.5で最も活性が低くなった。pH5.5で80分間処理、または35℃で40分間インキュベートすると、SERCAの活性が80%低下した。したがって、ゴマサバをできるだけ冷蔵庫(5℃)で保存し、筋小胞体の変性を遅らせるとともに、ATPとpHの減少を抑制することが、鮮度低下を遅らせる有効な方法であると考えられる。

【発表論文】
タイトル :Ultrastructural and biochemical changes of sarcoplasmic reticulum in spotted mackerel (Scomber australasicus Cuvier, 1832) muscle during cold storage at 5 °C
著者   :Jia Liang, Zhuolin Wang, Lijun Zhou, Yabin Niu, Chunhong Yuan, Yuanyong Tian, Koichi Takaki
雑誌名  :International Journal of Food Science and Technology
DOI番号 :https://doi.org/10.1111/ijfs.16482