Fujiwara/ 7月 4, 2023/ RESEARCH TOPICS

 

AIC生物生産部門 山田美和教授らの研究グループは、岩手県山田湾から新規なバイオプラスチック分解菌を発見することに成功しました。さらに、その微生物からバイオプラスチック分解の役割を担う酵素を世界で初めて特定し、諸性質を明らかとしました。

 

石油を原料とした従来のプラスチックが分解されずに環境中に蓄積することで引き起こされる様々な環境問題の対応策として、現在様々な生分解性プラスチック(生プラ)の開発が行われています。生プラの開発では、プラスチックを合成・加工するだけでなく、環境中でどのように生分解されるかを調査する研究もまた、生プラ使用が環境中へ及ぼす効果や製品開発の際の寿命コントロールなどを考える上で重要となってきます。

生物資源を材料するバイオプラスチックのポリアミド4(PA4)は、優れた材料としての性質を有し、陸・海洋環境と様々な環境下で生分解される生プラとして、現在、実用化を目指して研究開発が進められています。山田教授らの研究グループは、過去に陸上微生物由来のPA4分解酵素を世界で初めて特定しました。

今回は、PA4の海洋環境における生分解メカニズムを明らかとするために、PA4分解菌を三陸やまだ漁業協同組合協力のもと、岩手県山田湾から単離し、同菌からPA4分解酵素を特定することに成功しました。得られた酵素の諸性質を調査した結果、本酵素はPA4のアミド結合を加水分解することでPA4を分解していることを明らかとしました。さらに、本酵素は、分解するための触媒ドメイン、PA4と結合するための基質結合ドメイン、両ドメインをつなぐリンカードメインを有していることが予測されました。また、本酵素は、カルシウム非存在下では、自己分解を引き起こし、PA4を分解する能力も変化することがわかりました。

海洋環境におけるPA4分解酵素が特定されたことはこれまでになく、本研究が世界で初めての成果となります。よって、本研究は、海洋環境におけるPA4分解メカニズムを分子レベルで詳細に明らかとするための大きなヒントを得ただけでなく、酵素学的にも重要な基礎研究成果であると言えます。

【発表論文】
タイトル :Marine bacterial enzyme degrades polyamide 4 into gamma-aminobutyric acid oligomers
著者   :Yusuke Saito, Masayoshi Honda, Tetsuro Yamashita, Yoko Furuno,
      Dai-ichiro Kato, Hideki Abe, Miwa Yamada
雑誌名  :Polymer Degradation and Stability (2023)
DOI番号 : https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2023.110446