Fujiwara/ 7月 4, 2023/ RESEARCH TOPICS

 

次世代アグリイノベーション研究センターの下野裕之教授らは、水稲の初冬直播き栽培の実用化のための基礎的な知見として、品種により種子の越冬後の出芽率が異なるとともに、同一品種でも採種された気象環境で出芽率が異なることを明らかにしました。

 

水稲の初冬直播き栽培技術は、岩手大学発の革新的な技術です。水稲生産を担う生産者の高齢化が急速に進む中、主食である水稲の安定的な供給は極めて重要です。

初冬直播きでは播種した種子が出芽までの長期間、土中で過ごすことから、その生存率の維持する必要があります。日本で栽培されている品種は、北海道の「ななつぼし」、東北地方の「ひとめぼれ」、北陸地方の「コシヒカリ」、九州地方の「ヒノヒカリ」など、地域ごとに適応品種が異なります。

この技術を日本全国に普及する上で、それぞれの地域の品種がこの技術で利用できるかを明らかにするため、全国から60~72の品種ならびに採種地(=種子を得るために栽培した地点)の異なる種子を用いた大規模な試験を3シーズンにわたり評価しました。
結果、初冬直播きでの越冬後の出芽率に品種と採種地で0~63%までの大きな違いがあることをはじめて明らかにしました。また、品種による遺伝的な違いのみならず、同一の品種でも採種地が異なれば出芽率が異なり、寒冷地で採種した種子は暖地で採種した種子より出芽率が低下することを明らかにしました。その背景にある分子生物学的なメカニズムの解明を目指し研究を進めています。

得られた基礎知見は、持続可能な水稲生産のため、実際に生産者が初冬直播きを導入する際の重要な基礎的な知見となります。

【発表論文】
タイトル :水稲の初冬直播き栽培における出芽率に品種ならびに採種地が及ぼす影響
著者   :及川誠司・松波麻耶・下野裕之
雑誌名  :日本作物学会紀事:92(3)2023 209-219 (2023)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   図.各試験年での水稲の初冬直播き栽培における品種と採種地の組み合わせが出芽率に及ぼす影響