Fujiwara/ 8月 1, 2024/ RESEARCH TOPICS

AIC生物生産部門 山田美和らの研究グループは、エチレングリコールから有用なグリコール酸を大腸菌で合成させる際に、重要な酵素遺伝子の一部に変異を導入することで、グリコール酸の生産性を約1.2倍向上させることに成功しました。また、この遺伝子変異によってグリコール酸の生産性が向上した原因についても詳細に明らかとしました。

 

自動車のエンジンの冷却液や不凍液には、高濃度のエチレングリコールが含まれていることが知られていますが、使用後のこれらのエチレングリコールの再利用は、未だ一部に留まっています。
山田らの研究グループはこれまで、2種類の酵素 [Lactaldehyde reductase (FucO)とLactaldehyde dehydrogenase (AldA)]を過剰発現させた大腸菌を利用して、エチレングリコールを有用なグリコール酸へと変換する技術を構築してきました。しかし、変換効率が低かったため、大腸菌細胞内におけるこれらの遺伝子の機能向上あるいは発現量の向上によって、変換効率の向上を目指しました。今回は2種の酵素の中でも、FucOに着目し、fucO遺伝子に変異を導入して多種類の変異体を作成しました。約4,600クローンの変異体から、グリコール酸合成量の向上した2種の変異体を取得し、得られた変異体の遺伝子変異箇所を特定しました。詳細な形跡の結果、fucO遺伝子における1,130番目付近の遺伝子変異が、mRNAの不安定化を引き起こし、予想外にもfucO遺伝子の下流に存在しているaldA遺伝子の細胞内における発現量を向上させたことでグリコール酸合成量が向上したことを明らかにしました。本成果は、産業廃棄物を原料とした有用物質生産の技術構築に資するだけではなく、合成生物学における新たなアプローチ法を提示できた点でも価値があります。

【発表論文】
タイトル :Beneficial base substitutions in Escherichia coli fucO gene for enhancement of glycolic acid production
著者   :Mayu Nemoto, Wataru Muranushi, Chen Shuting, Yusuke Saito, Daisuke Sugimori, and Miwa Yamada
雑誌名  :Journal of Bioscience and Bioengineering
DOI番号 : https://doi.org/10.1016/j.jbiosc.2024.06.007