Fujiwara/ 8月 1, 2024/ RESEARCH TOPICS

次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授と同大学農学部王卓琳研究員(責任著者)らは、ホタテガイ(Mizuhopecten yessoensis)の閉殻筋の生化学的および構造的特性の年間変化に関する研究を行い、その成果を国際学術誌「Frontiers in Sustainable Food Systems」(IF2023 3.7)に発表しました。

 

オスとメスの活ホタテのサンプルを年間通して毎月分析し、ホタテ筋原線維タンパク質のCa2+-ATPase比活性を調べたところ、活性は冬にピークに達し、夏には最小に減少することがわかりました。しかし、オス・メス間に有意差はありませんでした。また、ホタテ筋原線維タンパク質の熱安定性にも着目し、38℃と45℃での塩濃度の違いがホタテ筋原線維タンパク質のCa2+-ATPase失活速度に大きな影響を与えることがわかりました。加熱温度を38℃から45℃に上げると、失活速度は17〜36倍に増加しました。さらに、内因性蛍光、表面疎水性、総チオール含量、また、電気泳動分析(SDS-PAGE)を用いて筋原線維タンパク質の構造特性と組成を評価分析しました。これらの指標では、季節変動は観察されませんでした。本研究で得られた閉殻筋の構造と熱安定性は、同じ棲息水域の魚類より、オス・メスともに年間を通して安定しており、加工・保存に適していることがわかりました。これらの知見は、ホタテガイの保存と有効利用のための理論的根拠と実用的情報を提供するものです。一方、今後の研究では、Ca2+-ATPase活性の季節的変化とタンパク質修飾の可能性に注目する必要があることが示唆されました。
※この研究は岩手大学、中国大連海洋大学の研究者が協力して成果を上げました。

【発表論文】
タイトル : Annual variation in thermal and structural properties of yesso scallops (Mizuhopecten yessoensis)
adductor muscle
著者   : Yuanyong Tian, Minghui Jiang, Zhuolin Wang, Chunhong Yuan
雑誌名  : Frontiers in Sustainable Food Systems
DOI番号 : 10.3389/fsufs.2024.1357410