Fujiwara/ 8月 27, 2025/ RESEARCH TOPICS

次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授と中国上海海洋大学、大連海洋大学との共同研究は、ツノナシオキアミの食用化に向け、真空マイクロ波解凍による品質と風味の評価をおこない、イサダの品質と鮮度維持の最適な解凍条件を明らかにしました。

 

【研究の背景と概要】
イサダ(ツノナシオキアミ、Euphausia pacifica)は三陸の重要な水産資源で、岩手県沿岸での水揚げは年間約1万トンと全国の半数を占める。従来は養殖魚の餌や釣り餌など低価格用途が中心だったが、近年8-HEPEやEPAといった健康成分が注目され、食品利用の可能性が広がっている。しかし、水揚げ後に急速に黒変し鮮度保持が難しいことや、漁獲後の扱いへの意識不足が課題である。酵素活性の抑制や品質維持技術の確立により、高付加価値な食用製品開発が求められている。

本研究は、ツノナシオキアミの高付加価値利用を阻む最大の課題である「鮮度保持」と「加工利用拡大」に着目し、異なる解凍方法を比較した。流水解凍、氷水解凍、真空マイクロ波解凍を用いて品質や風味を評価した結果、ATPやADPの含量は解凍直後から28時間まで大きな変化はなかったものの、イサダは他の魚類に比べてHxR、Hx、K値の増加が速やかであることが示唆された。また、解凍直後の遊離アミノ酸は主にタウリン(Tau)、ロイシン(Leu)アラニン(Ala)、オルニチン(Orn)、アルギニン(Arg)で構成され、貯蔵8時間以降に多くのアミノ酸やアンモニアが増加することが明らかとなった。三つの解凍方法を比較した結果、真空マイクロ波解凍はHxRやK値、遊離アミノ酸総含量、pHの変化が最も緩やかであり、筋構造保持、色調変化抑制、ATP分解の遅延、IMP蓄積促進などに優れることが確認された。さらに、解凍時間を大幅に短縮できる点からも、真空マイクロ波解凍がイサダの品質保持に最適な方法であることを示した。

【発表論文】
タイトル :Evaluation of vacuum microwave thawing on quality and flavor profiles of North Pacific krill (Euphausia
     pacifica
) for potential human consumption.
著者   :Lin, Y., Zhang, L., Han, H., Tian, Y., Yamashita, T., Yuan, C.,& Wang, Z.
雑誌名  :Food and Bioprocess Technology
DOI番号  :https://doi.org/10.1007/s11947-025-03838-1

三種類の解凍方法による北太平洋オキアミ(Euphausia pacifca)のpHの変化

三種類の解凍方法による総遊離アミノ酸のヒートマップ