Fujiwara/ 8月 27, 2025/ RESEARCH TOPICS

次世代アグリイノベーション研究センターの袁春紅教授とバングラデシュ大学との共同研究は、紅藻抽出物の抗酸化・抗菌効果に着目し、天然保存剤として魚肉の品質と鮮度維持の最適条件を明らかにしました。

 

【研究の背景と概要】
パンガシウス(Pangasius hypophthalmus)は、成長が速く栄養価が高いことから東南アジアを中心に広く養殖される重要な食用魚で、欧州をはじめ世界130か国以上で消費されている。日本でもバサやスワイの名で流通しているが、フィレ加工品は高水分かつ多価不飽和脂肪酸を多く含むため、冷蔵保存でも鮮度劣化が早いという課題がある。従来はBHAやBHTなどの合成抗酸化剤が用いられてきたが、健康リスクが懸念されることから、天然由来の保存料が求められている。
近年、紅藻Gracilaria属に含まれる抗酸化・抗菌成分が注目されており、本研究ではその抽出物(GE)の保存効果を検証した。1~3%GEにフィレを浸漬し、化学的・細菌学的・官能的評価を行った結果、2%処理群が最も優れた保存効果を示し、可食期間を6日から12日へ延長できた。これはポリフェノール類などの抗酸化・抗菌作用によるものと考えられ、Gracilaria抽出物は自然由来の魚介類保存料として有望であり、水産加工分野での活用が期待される。

【発表論文】
タイトル :Preservative Effects of Gracilaria sp. Extract in Maintaining the Quality and Shelf Life of Refrigerated Pangas
     (Pangasius hypophthalmus) Fillets
著者   :Md Apon Dulal, Rokshana Islam, Shoumik Ahmed, Chunhong Yuan, A K M Azad Shah
雑誌名  :Food Sciencen & Nutrition
DOI番号  :10.1002/fsn3.70683

冷蔵条件下におけるP. hypophthalmus(パンガシウス)フィレの総揮発性塩基性窒素(TVB-N)値の変化

 

 

 

 

 

 

 

冷蔵条件下におけるP. hypophthalmus(パンガシウス)フィレの過酸化物価(TBARS)の変化