Fujiwara/ 6月 15, 2026/ RESEARCH TOPICS

本研究は、岩手県盛岡市におけるラスのロードキル(交通事故死着目し、その発生場所の特徴と要因を明らかにしたものです。ロードキルは野生動物の個体数に影響を与えるだけでなく、道路利用者の安全や死骸処理の負担、公衆衛生上のリスクにもつながる重要な問題です。特に鳥類ではカラスのロードキルが多いことが知られていますが、その発生要因についてはこれまでほとんど研究されてきませんでした。
本研究では、盛岡市内の高速道路、国道、県道、市道における過去のカラスのロードキル記録298件を収集し、発生地点の空間分布を解析しました。その結果、ロードキルは盛岡市中心部と高速道路沿いに集中していることが明らかになりました(図1)。また、発生時期を見ると、6月から7月にかけて急増する傾向が見られました。これは、巣立ったばかりで飛行に不慣れな若鳥が増える時期と一致しており、それが一因と考えられます。
さらに、高速道路に限定して詳しく解析したところ、ロードキルは市街地に近い場所、そして道路沿いの樹木が途切れた「植栽空隙部」付近で多発することがわかりました(図2)。高速道路沿いには防風・防雪のための樹木が連続して植えられていますが、河川や交差道路との接続部では樹木が途切れる場所があります。本研究では、この「すき間」がカラスの高速道路への侵入口となり、車両との衝突リスクを高めている可能性を示しました。実際に、ロードキルの約40%が植栽空隙部から20m以内で発生していました。
カラスは一般に高い飛翔能力を持ちますが、ねぐらと餌場を往復する際には比較的低い高度を飛ぶことがあります。盛り土や高架構造で周囲より高くなっている高速道路は、ちょうどその飛行高度と重なりやすく、そこに侵入口となる空隙があることで衝突が起きやすくなっていると考えられます。
本研究は、これまであまり注目されてこなかった鳥類ロードキルの発生メカニズムを具体的な道路構造と結びつけて示した点に意義があります。対策としては、ロードキル多発地点において植栽空隙部を減らしたり、防風壁などで侵入しにくくすることが有効と考えられます。一方で、交通量や二次的ロードキル(他の動物の死骸を食べに来たカラスが事故に遭うケース)など、今後さらに検証すべき課題も残されています。

【発表論文】
タイトル :岩手県盛岡市のカラスのロードキル多発地点の立地条件
     ―特に高速道路に着目して―
著者   :佐藤瑠一・原科幸爾・田村天・押切智博
雑誌名  :農村計画学会論文集6(1), 11-17, 2026
DIO番号 :https://doi.org/10.2750/jrps.6.1_11