Fujiwara/ 9月 16, 2025/ RESEARCH TOPICS


本研究は,重点対策外来種であるハクビシンの東北地方における分布拡大の過程を明らかにすることを目的としています。東北地方以外の地域では,ハクビシンの分布が山間部などの市町村の外縁部から中心部に拡大してきたことが報告されていますが,東北地方での分布拡大については十分に整理されていませんでした。
本研究では,岩手県を中心にハクビシンの駆除業務を行っている2社の駆除業務データを収集し,駆除業務データを生息情報と捉えて時系列に着目して整理しました。この結果,ハクビシンの分布はまず「人口集中地区」の外(一般的に市町村の外縁部)で確認され,その後数年遅れて「人口集中地区」(一般的に市町村の中心部)で確認される傾向にあることが明らかになりました(表1)。平均すると人口集中地区での初確認は人口集中地区の外より3~5年遅れており,この遅れには都市部の地理的障害(線路や広い道路など)が影響している可能性が考えられました。
なお,人口の多さによる目撃バイアス(目撃のされやすさ)が結果に影響していないか統計的に検証したところ,有意な関係は見られませんでした。つまり,人口の違いよりも,ハクビシンの侵入パターンそのものが要因であると考えられます。
以上から,ハクビシンは農山村部から都市部へ分布を拡大するには数年程度の時間を要することが明らかになりました。人口が多い都市部では価値観が多様であり,一貫した被害対策が難しいため,この数年間で都市部での被害対策の方針を検討することは迅速な初期対応をする上で重要であると言えます。

【発表論文】
タイトル :東北地方におけるハクビシン(Paguma larvata)の都市部への分布拡大に要する年数
著者   :福島良樹・原科幸爾
雑誌名  :東北森林科学会誌30(1), 17-22.
     https://cir.nii.ac.jp/crid/1524244890947488256