Fujiwara/ 9月 14, 2023/ NEWS

9月1日(月)「第14回一般・高校生向けセミナー」を開催しました。
第14回は【食料危機に立ち向かえ!持続可能な食料生産:地球温暖化への適応品種の利用】の演題で、
下野裕之(しものひろゆき)生物生産部門兼任教員(センター長/農学部教授) が講演を行い、
48名の参加者に熱心に聴講いただきました。

私たち人や地球上の生き物は、生命を維持するためには、エネルギーの供給が必要です。
世界の食料需要は拡大しており、食料の増産が必要とされています。
気象変動、砂漠化、高温障害、工業地との競合で栽培適地は徐々に減少されており、単位土地面積あたりの生産力の向上が必要とされています。

食料に含まれるエネルギーの源は太陽の光エネルギーです。
太陽の光エネルギ―は、植物の光合成により化学エネルギーに変換され利用されています。
植物はCO₂を吸収し、光合成を行い、光エネルギーを化学エネルギーに変換します。

大気中のCO₂は地球環境を大きく変え、気候変動により食料生産にマイナス効果をもたらすと言われていますが、大気中のCO₂の上昇は植物の光合成を促進させ収量を上げるプラスの効果があります。
この効果を利用して、大気中のCO₂が増えたことによる収量が増やしやすい品種を選抜すれば、大気中のCO₂が少なくなることにつながり、私たちが食べる物の増産にもつながります。
この逆転の発想を利用して、将来予測される食料危機について対応できないか研究が進められています。

高CO₂を与えて光合成が促進し収量が上がる品種がある一方、あまり収量が上がらない品種もあるため、適応品種を選抜する研究が行われています。
また、現行の品種では、高CO₂環境での増収は20%で、目標とする70%の増産には満たないため、適応品種の選抜や、関与する遺伝子領域の特定など、増加する大気CO₂環境に適応した品種の利用による食料増産と環境負荷軽減の研究が進められています。

本講演では、上昇するCO₂を逆転の発想から、CO₂の効果を利用して高CO₂環境下での食料増産につなげる研究について、画像を交えながら丁寧にわかりやすく説明していただきました。

参加された皆様からは、「CO2濃度増加の問題を逆手にとって、食料生産の課題について解決方法を見つける、という発想が面白いと思いました。」、「世界の食糧危機に対応するため、地球温暖化に適応するために実施された品種選抜の研究が、日本・世界のいろいろな場所で行われていることに驚いた」、「一日のCO2の濃度の変化は、植物の量だけでなく、人間などの生き物の数でも変化すると思いました。」など、感想が寄せられました。

次回は10月24日(火)に、
【ビニール袋、プラスチックの再生あるいはグリーン化】と題し、
芝﨑 祐二 生物生産部門兼任教員(理工学部准教授)が講演を行います。

今後も継続的に開催し、当センターの研究成果を、日常の身近な話題に落とし込みながら地域に向けて発信していきます。
ご参加をお待ちしております!